「ドラえもん のび太の新魔界大冒険 〜7人の魔法使い〜」という映画を見たことがあるだろうか。「新」じゃない方でもいいけど。
あの映画についての話をしたい。
あれは自分が中学生だったか高校生だったかの時。
テレビで映画を見ていたんだ。
軽く映画のあらすじの説明をしよう。
この映画はのび太が魔法のある世界に行きたいなあと思うところから始まる。
もしもボックスで「もしもこの世界に魔法があったら」と願い、のび太とドラえもんは魔法がある世界線に移動する。
そしてこの世界が魔界や魔王といった類の脅威に晒されていることが明らかになる。
この時、なんやかんやでもしもボックスが故障。元の世界への帰還が不可能に。
しゃーなく魔王を倒すために魔界に向かうもののドラえもん・のび太以外の仲間が投獄され、ドラえもん・のび太が石にされてしまう。
ドラミが石化を解いてくれた為、ドラえもんとのび太が復活。
さらにドラミの持っているもしもボックスで元の世界に戻れることが判明する。
めでたしめでたし、とエンディングテーマが流れ始める——が、そこで待ったをかけたのがのび太。
のび太「元の世界に戻ったらこの世界はどうなるの?」
ドラミ「元の世界に戻ってもこの世界は残り続けるわ」
のび太「じゃあみんなは捕まったままこの世界は魔王によって滅びるの?」
ドラミ「そういうことになるわね」
のび太「そんなのダメだ!みんなを救って魔王を倒さないと!」
僕「は?何いってんだこいつ」
僕は並行世界の人間を救おうとするのび太を嘲笑った。
僕は他の世界の人を助けることに倫理性を感じなかった。
僕は倫理的なようでいて別に倫理的でない行動をするのび太を見下した。
偽善者だと思った。別に悪者ではないにせよ、特に良いことをしているように見えなかった。
数年後、成人した僕は未だそれを覚えている。
でも、今になって思う——
並行世界の人間と現実の人間は何が違うのだろうか。
無関係の人間でも救うのが道徳の基本原則だ。
僕はなぜ、どんな理由で彼を嘲笑ったのだっけ。
僕はただ悦に浸りたいがために笑ったのではないだろうか…?
——並行世界の人間を救う必要はない
——同性愛者を結婚させない
——黒人は人間ではない
——女性に選挙権を認めない
一体、そこになんの違いがあると言うんだろうか。
どれも同じじゃないか、都合のいいものだけ区別だと言ってたんじゃないか、僕は。